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Artist's commentary
スーパー艦娘(ヒロイン)タイム
「駆逐艦同士、君も混ざって観たらどうなんだ?」
見当もつかぬという表情を顔に張り付けた初春を連れて、
私は艦娘共用の休憩室まで赴いていた。
共用とは言っても、大抵の昼日中では、主に
新入艦や練度のまだ低い駆逐艦が占拠し、
上官から『託児所』と揶揄される部屋なのだが。
「何ぞなアレは?」
「対深特務部は情報公開を控えねばならん性質上、
世間からの信用を買いたい一心だからな。であれば…
君達を英雄に仕立てるのが一番楽だという大人の策がアレだ。」
実際の艦娘をモデルに番組を制作、出演までさせる鎮守府の副業。
天龍は生来から目立ちたがりなだけあり、二つ返事で始めたが、
要するに見世物。私は正直、苦々しく彼女を送り出したのだ。
勧善懲悪の英雄、戦時とあれば民意を束ねるにも便利な偶像だろう。
…だが、世界の海を割り、人々を蹂躙する深海棲艦を相手にして尚思う。
『我々は何と戦っているのか?敵さえいれば正義は生まれるのか?』
勿論、鋼鉄を纏う乙女達は讃えられ労われて当然なのだが。
迂闊に彼女らを英雄とする世論も上層部もどうかしている。
着任して日々、実感はいや増してきた。艦娘は同じ人間だ。
視ろ。それなりに掃除が行き届いている筈の我が基地内ですら、
初春はさも埃っぽいと言わんばかりに扇子を口元に添えるのだ。
私にはその非合理が愛おしい。気高くあらんとする初春の嫌俗気質。
とは言っても、確かに此処は俗で雑だった。
日曜の朝から映像機に噛り付いて『特撮』に夢中になる六駆達や、
お転婆娘どもが騒がしく走り回る『託児所』を目の当たりにすれば、
旧世代の公家のような眉を精一杯に寄せもしよう。
…だが、しらばっくれても無駄だ。名家の出だろうと所詮は小娘。
世間知らずが故に友人の作り方も、嘘も下手である。
「知らない割に非番のこんな時間から、随分と寝覚めが良いな?」
此処に用があるのだろう。彼女らが出払ったすぐ後に。
「枕草子を知らぬかえ?夏の盛りも近いと書物を読むに適うは、
涼しい時間に限るであろう?月と蛍の灯でもて照らすも雅でのう。」
夏は夜、だろう。ならば縦しんば起きていても寝不足。
敢えて口にしないのはこの娘の気を損ねても面倒だから。
今はあくまで何気なく初春に渡さねばならぬ物があるのだから…