Artist's commentary
逆鱗
油断した。宝塔を狙ってる輩なんてそこら中にいる。当たり前のようにただ探して持ち帰れる補償なんてないのに。
ご主人が一緒じゃなければ宝塔も私も今頃-。
しょっちゅう宝塔を無くすご主人。いつもしぶしぶ探していたが、それが私の存在する理由、
この人に使える理由なんだ。
もう宝塔も槍も、何度無くしたって構わない。怒らないで探す。
そんな怖い顔をしないでくれ。いつものようにメソメソしながら私の前に来てくれ。牙を向いちゃいけない。笑ってくれ
とんだ勘違いだ。私はご主人の監視役、私がいないと何もできない。そう思っていた。
いつも見守ってくれていたのはご主人だった。
ひどい怪我だ。血も出てる。とても痛そうだ。裁縫で指を指しただけでピーピー泣いていたのに。
ご主人は今とても大事なものを無くそうとしている。
ダメだご主人。私の能力でもそれを無くしてしまったら探すことなんてできない。
お願い、死なないで‥。
痛たた‥、油断しました。服もボロボロですね。裁縫は苦手です。
槍も折れてしまいました、これは大目玉ですね。
いつも宝塔をなくしてばかりですが、不満を吐きつつも探してくれて助かってますよ。
僕が宝塔をなくさないと、ナズはお仕事がなくなってしまいますからね。
今回こそ、なくさないでしっかり管理できるよう頑張ります。
そんなに泣かないで下さい。いつものようにプンプンながら僕の前を歩いて下さい。小言を言って、笑って下さい。
ナズは無事ですね。びっくりして酷く怯えてますが、怪我がなくて何よりです。
危うく宝塔よりも大切な者をなくす所でした。貴女の能力を以っても絶対に探せませんからね。
昔を思い出す。毘沙門天の弟子になる前、山で人間を喰らっていた時を。
その時の感情が込み上がってくる。
でも今は-
「宝塔がほしいなら僕だけを狙えば十分なはずです。ナズに危害を加えるなら」
「食い殺しますよ」