Artist's commentary
やよいちゃん可愛い
陽が東より昇り西に沈むように、やよいちゃんが可愛いことは揺るがぬ事実なワケですが、あっ、誰ですか? あざといとか言っている人。そんな素直に好きと言えない小中学生みたいな下手な韜晦はおよしなさいな。そんなあなたも、第1回目の放送でオープニングの涙目ダブルピースを見て瞬く間に彼女の可愛らしさの虜になったはずですっていうかならない人いるんですか? しかもエピソードを重ねるごとに目に見えて成長していくんですよこの娘は。そんな彼女の姿に心を打たれない人がいるっていうのですか? 馬鹿馬鹿しい。そんなありもしないことを問うことそのものが馬鹿馬鹿しい。生き生きと笑う彼女も可愛いし、メソメソ涙ぐむ彼女も皆等しく可愛いのです。とはいえ、くれぐれも注意していただきたいのですが、いくら彼女の泣き顔が可愛いからって、わざと泣かせるようなことをしてはいけません。ウキウキとイラストを描いているスケッチブックを無理矢理覗きこもうとしたり、あまつさえそのイラストをからかったり、はたまた彼女の大好きなロボッターを幼稚で馬鹿馬鹿しいと斬り捨てたり、構内美化のポスターコンクールでの結果を蒸し返したりしてもいけません。そんな事をした結果、他のプリキュアのお友達に泣きついて、頭をなでなで慰められる様子が見たいからといって、絶対に彼女を意図的に泣かせるような事をしてはならないのです。泣きそうになってプルプルと肩を震わせながらじっと耐えようとしている彼女に追い打ちをかけようとするなんていう事は以ての外。許されざる大罪です。万死に値します。彼女の泣き顔に、あなたが1万回死んででも引き換えにしてもいいと言えるだけの価値を感じていたとしてもやってはいけないことなのです。いいですか? 大事なことなので何度でも言いますが、彼女をわざと泣かせようとなんてしてはいけません。もじもじと口元に手をやって不安げにしている彼女の姿に得も言われぬ愉悦を感じたとしてもそれは許されないことなのです。わかっています、ええ、わかっています。あなたの次のセリフは「そんな抑圧ばかりを自分に課していたら窮屈すぎて発狂してしまうじゃないかバカヤロー」ですね。わかっていますがあえて言いましょう。それが信仰の道なのですよ。耐えるしかないのです。どんぐりを拾って嬉々としていたロリやよいちゃんが一転、石に躓き泣きだしてしまった姿は身を捩ってしまうほどに可愛かったし、漫画原稿にインクをこぼしてしまい崩れ落ちてしまいそうな表情で目に涙をためていた姿は、こちらも胸を掻き毟ってしまいたくなるほど苦しい思いをしたものですが、そんな苦悶の中にも決して否定しきれない甘美な陶酔があったのは否定しきれないでしょう。そんな悩ましい魅力を彼女に対して抱いていたとしても、それを意図的に引き出そうとしてはいけないのです。じっと耐えましょう。私だって辛い。あっ! なんですかその落ち着きのない手つきは! なるほど、彼女の柔らかそうなほっぺたを抓って泣かせようという短絡的な行為を働こうとしていたのですね。もうそんな衝動的な行為に及ぼうとするほどに忍耐を重ね限界が近づいているのですね。わかります。ええ、わかりますとも。その辛さ、私であればわかります。そんなに辛いのは、やよいちゃんが魅力的すぎるがゆえです。まったく困った娘ですよ、あの娘は。あの可愛らしさは間違いなく彼女の長所ですが、可愛すぎることが短所になってしまっています。しかしながら考えようによっては、この苦しみそのものを彼女に打ち明けてしまうというのも、いっそ清々しいのでは? そう、こんなにも身の内を焦がすほどの思いを抱かせるのはすべて君が悪いんだと、ちょっとだけ、ほんのちょっぴりだけ、いじけてみせて、その後の反応を見て、せめてもの慰みにしてはどうでしょうか。圧倒的かつ絶対的な善であり、可愛らしさという超越的正義を体現せしむるその黃瀬やよいちゃんという在り方は、同時に我々に抗いがたい渇望を抱かせる絶対的な悪でもあるのです。我々が、瑣末な抵抗を試みたとしてもそれは必然。無理もないことなのです。我々風情が飛び跳ねて見せてもやよいちゃんは揺るがないのです。ああ、そうであれば早速実践してみなければ。誤解のないように言っておきますが、私は罪を犯そうというのではありませんよ。間違ってもやよちちゃんの涙を見たいがため、行動を起こすのではないのですって・・・おやおや? おばあさん、あなたいつの間にそんなところに立っていたんですか? はて、どこかでお会いしましたっけ。え? 何々? 何です? その黒い玉は。わ、わわわわわ。何だ何だ? おばあさんの持っている玉から黒い稲光が!! それとともに身体に力がみなぎってくるじゃありませんか。それに何故か、叫びをあげたくてたまらなくなってきました。なぜでしょう、その言葉は生まれる前から知っていたような気さえしてきてしまいます。ああ、もう思うに任せて叫んでみましょうか、よし、いきますよ……アカンベェェェェェェェェェェェェェェェッ!!!!