Artist's commentary
垣根くんのゆううつ
最低限の明かりしか無い部屋。視線の先には、人間だったと思しき『何か』。透明なガラス越しに見えるそれは、暗い部屋の中では全体を視認できない。しかしそれは間違いなく彼の『記憶』に存在するものだ。粘度の高そうな液体の詰まった小さな容器が三つ。中身までは見えない。けれど彼はそれが何なのかを察していた。『何か』の胴体部分の付近には、冷蔵庫のような――いや、それよりも大きな機材が鎮座している。静まり返った室内に機材の排気音ばかりが響いていた。
(――あんなもの、)
彼は端正な顔を苦しげに歪めながら後退る。
(あんなもの、俺は知らねえ……知らねえはずなんだ)
がた、と硬いものにぶつかる音。いつの間にか背後の培養槽にべったりと背を預けていた。彼の足からは次第に力が抜けて、冷たい床に引き寄せられるように腰が落ちる。
(……知らない、覚えてなんかいない、俺の記憶には)
愕然とした表情で。
(あれが――俺だなんて、そんな、)
ガラスの壁の向こう、横たわる肉塊は学園都市第二位だったものだ。脳裏に蘇るのは十月九日の出来事。噴射する黒翼を背負った白髪の少年に、『俺』は――
「……おかしいだろ」
情けなく座り込んだ少年は、青ざめた顔で声帯を震わせた。
「じゃあ、ここに居るのは、ここに居る俺は」
検査着の上に濃色のジャケットを羽織り、黒い瞳は驚愕に揺れている。くすんだ色の髪をくしゃりと掻いた。
「――この『垣根帝督』は、一体誰なんだよ」
彼の姿は、『彼の記憶の中にある』、五体満足の垣根帝督そのものだった。
■ダメになった冷蔵庫ボディの方とは別に体細胞クローンなんかを作っておいてそれに学習装置的なもので記憶を移植して復元不可能なほどべしゃべしゃになったオリジナルの肉体を見て吐き気を催すクローン垣根とかそういうのを妄想したので。培養槽大好き!!!!!よかった、描けて(しょうこお姉さん顔)■もう毎回こういう風に小ネタ文章書いてそのイメージ絵描くとかそんな感じでいい気がしてきた ところでこの格好の垣根を描くのがかれこれ三度目なんですけどどんだけ検査着?入院着?好きなんだってね 大好きです