Artist's commentary
受け継がれる魂
――東雲なのの調査を続けてきて、ひとつわかったことがある。
確かに、東雲はかせの開発した人工知能は優れたものである。
だがそれには、致命的な問題点がひとつあった。
たったひとつの、しかし最も重要な、越えられていない技術的ブレイクスルー。
それが意味していたのは……その人工知能には、『人の心』など宿るべくもない、ということだった。
……だが、それでもしかし、東雲なのは確かに、『人の心』を持っている。
いったい、何が彼女を『人間』たらしめているのか?
それを追求していった時、私は確かに見た。
時折東雲なのの後ろに現れる、ひとつの影。
――そう、私の師匠でもあった、あの女(ひと)の姿を。
その日から、東雲なのは私の研究対象ではなくなった。
……いや、変わったのは彼女ではなく、私のほうなのかもしれない。
それはもはや、調査すべきものではなく、見守るべき存在なのだと。
――201x年 4月 23日、中村かな 記す。
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『もしも』の世界、無数に広がる脳内並行世界のひとつ、ということで。
こんな絵を描きながら、数日後にはいつものなのや中村先生を描いているであろう、
そんな俺は、もしかしたら多重人格なのかもしれない。w